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手染メ屋
2002年にオープンした草木染めやさん
代表的な商品は、オーガニックTシャツ(メンズ、レディス、子ども)
http://www.tezomeya.com/
<お話を伺った方 店主 青木正明さん>
手染メ屋さんとの出会いは、5年ほど前。
当時とても気に入っていた白いブラウスの染め直しをしたく、
インターネットで「染め直し」屋さんを探したとき。
汗じみやが気になる旨を伝えて、それが目立たない色、メンテナンス
が簡単なこと等をメールで親身にのってもらったことを覚えている。
ブラウスは郵送し、数週間たってお薦めの芥子色に化粧直しされて戻
ってきた。それは、リユースという域を超えて生まれ変わった洋服を
纏う喜びで、以来、毎年毎年、文字通り着たおした。
実際に京都のお店へ赴くことはなかったけれど、いつもメルマガを
読ませ読ませてもらって、いつか機会があれば行ってみたいな〜と
思っていた。
そんな気になる「手染メ屋」さんに会いに、今回は、京の町屋の面影
が残る京都御所の南にあるショップ兼アトリエを訪ねた。
●偶然に導かれてスタート
「草木染めを見た時の印象は『生地と色がかわいい!』
でした。大好きな古着の感じに似ていて驚きました」
店主の青木さんは1966年生まれ。
東京で育ち大学を出て、京都の大手アパレル企業に就職。MDを担当する
中で、社内のエコロジカルブランド立ち上げプロジェクトに参画、その商品
企画アイディアの一環として「草木染」に出会ったとのこと。
お目にかかるまでは、「もしや、ご実家が代々の染め物やさん?」
「京都の風土と染め物の関係は?」などなど、全く知識のない私が質問
しても大丈夫かしら?と不安になっていた。
が、ご本人曰く、
「特に自然志向でもなかったし、オーガニックとかに興味もなかった
んです。京都も偶然本社採用で、住めば都だったたから・・・」とのこと。
そんな青木さんだが、草木染の研究所で出会った「色」が、まさに人生
を決める?!「運命の出会い」となった。
もともと、DCブランドなどはあまり好きでなく、古着が好きだった青木
さんにとって、初めて触れた草木染の印象は「古着の感じに似てる!生
地と色がかわいい!!」だ。
おじいちゃんおばあちゃんが愛用する伝統の草木染めではなく、自分が
好きなテイストを追求したい気持ちがふくらんで「手染メ屋」が産声を
あげた。
●自分たちの着たいものを作る
「敢えていうならば、こだわりは『自分の好き嫌いが
判断基準』ということでしょうか」
「“こだわり”ということばは好きではない」というのが青木さんの持論。
ただ、敢えていうならば、「自分の好き嫌いが判断基準」とのこと。
今世の中には、差別化を意識するあまり、要素・技術が目的化した「こだ
わり」合戦が繰り広げられているが、青木さんは、モノづくりにおいて
そういうことを声高に叫ぶことに疑問を呈する。
物事の判断基準で大切にすべきは、「おいしい!」「かっこいい!」
「かわいい!」でいいのだ、と。
取材当時も、お客様に、「色もサイズも僕と妻が着て心地いいと思う
ものを作ってます」とさらりと語っていたのが印象的だった。
確かに、そのとおり。人の心を動かすのは、チマッこい枝葉ではなく、
もっとおおらからで根源的なエモーションであるはずだから。
●色の探求こそが進化
「古代色の復元。それがマイブームです。
探求することが、日々の染めの精度を高めることに
つながります」
草木染めの良さを最大限に感じてもらえるアイテムとして、オーガニッ
クのTシャツを中心に、お店には色とりどりのTシャツが並ぶ。

実は、私が初めて染め直しを頼んだ時も、色の選択肢の多さに驚いた。
なぜなら、オーガニックタオルなんかで草木染めというと茶、緑、黄土
色・・とほんわか地味色な印象が強かったから。
でも手染メ屋のお店やサイトには、鴇(とき)色、黄蘗(きはだ)色、
蒲萄(えびぞめ)色、灰桜色(はいざくら)色、etc.これまで聞いた
ことのない名前の色、豊かな色がずらりと並ぶ。現在、なんと12色の
オーガニックTシャツが定番で展開されている。
そして、多彩な色を生み出す草木染における進化とは?と尋ねると、
「古代色の復元」との答えが返ってきた。
歴史上、草木染めの技術的ピークは平安時代だったそう。
当時の天皇や高僧、貴族が身に着けていた深く鮮やかな色とりどりの
着物を博物館などで見る機会があるが、その染料はもちろん天然の草
木たち。
1000年以上も昔に人々が使った原料や染めの工程、それを支えた伝統技
術を思うと、感慨深いものがある。
青木さんは、当時の色を見ると、血沸き肉踊ると同時に毎度打ちひしが
れるという。だからこそ、平安時代の人たちの染め物から醸し出される
オーラが感じられるような、色や生地を作り上げることを追求したいとも。
そんな思いがあって、デイリーな染め作業の合間をぬって、染め界の
重鎮の先生が残した古代色のレシピ本をひも解くのが、マイブームだ
そうだ。
ただし、古代色を復元したからといってすぐにTシャツに新色が加わる
わけではない。古代色の探求は、クルマで言うところのF1に通じ、
その研究を重ねることで自然と技術が練磨され、日々の染めの作業の
質や精度を高めることにつながるのとのこと。
まったくもって草木染めは奥が深い。

染め界の重鎮 上村六郎氏の本。古代色のレシピなどが
漢文形式で書かれており、解読はとても難しそう
■現代生活の中に欠けがちな色を担う
「今の生活は、原色が溢れています。そんな中で、
草木染めは、自然界にある『フクザツな色』を
偶然担っているだけなんです」
青木さんは草木染めで生まれる自然の色を、『フクザツでやさしい色』
という。
「今、私たちの身の回りには、合成染料の発達によって原色や鮮明な色
が溢れています。でも、色がなかった昔の人は、今とは逆に、草木染め
で原色を再現しようとしていたんですよ」という指摘にハッとした。
確かに、言われてみると、椅子、器、ステーショナリー、テキスタイル
etc.私の身の回りにも鮮やかな色が氾濫している。
原色が溢れる現代生活だからこそ、『フクザツでやさしい色』を
みるとホッとできるんだな・・・と、妙に納得。
旅をしたり、展覧会などへ行くとつくづく思うが、日本ならずともア
ジアというエリアは、色と風土、文化、そこに暮らす人々の美意識に
強いつながりがある。それをアジアンビューティという人もいるほど
だ。草木染めが奏でる自然色を、古代から続く魂が求めてやまないの
かもしれない。
古今東西、無限の可能性がある『フクザツでやさしい色』の世界を
もっとのぞいてみたい気がしてきた。

古代色の見本貼。奈良時代、平安時代は鮮やかな原色ほど、身分の高さを
現わしていた
●人の手を見せる
「ショップは、モノづくりの現場が見える、まさに“働く
オジサン” みたいなもの」
手染メ屋のショップ兼アトリエは、お客様とのコミュニケーション
が生まれる、まさに「働くオジサン」の現場とのこと。
世の中では、「トレーサビリティ」と言ったりもするが(堅い響き
・・・)、プロダクトの生業やストーリーを、作業場で、作り手から直
に知ることができるというわけだ。
取材当日も、お客様が購入されるたびに、中性洗剤でのお手入れ法を
薦めたり、時には、お客様の使っている洗剤de知らないものに出くわし、
お店の奥でインターネットを検索してアドバイスを出すシーンも。
作り手から直接手渡しされるモノって、凝った説明書が一枚入っている
よりも、ダンゼン愛着が湧く。通販で簡単にモノが手に入る今の時代、
買い物している最中から、大事に長く楽しみながらそのモノと付き合う
自分を想像できるようなシチュエーションは、果たしてどれほど残され
ているだろうか・・・・・?
実は、今回私は、アトリエで藍染のワークショップを体験しながらの
取材だった。ふだんよく行く、ナチュラル系のショップで、包装代わ
りに服を入れてくれる生成りの手提げカバンを持参。
それにタコ糸で絞り柄を入れて染めるという作業をした。
藍の液は発酵させてつくるいわばヌカのようなもの。藍部屋なる所で、
その独特の匂いを嗅ぎながら、「浸染⇒空気に晒す」を繰り返すほど
に藍が深くなるのを目の当たりに。もちろん、できあがった私だけの
手提げは、かわいくて愛着もひとしおだ。

当日ワークショップで染めてリユースしたmy手提げ。
右は藍部屋にある藍の発酵液。
■「草木染め」でニッチマーケットを確立したい
「草木染めなど知らない人から、『このTシャツの色、かわいい
ですね〜』って言ってもらえるのが一番うれしいです」
取材当日、実にたくさんのお客様が来店された。
粋な着物姿の男性、大阪から仲間と連れ立った女性グループ、30代と
思しきカップルetc.。
どうやら、ここのお店には、店主自身が好きなファッション(例えば
ジャーナルスタンダードとか45rpmなど)と同じ志向のお客さまが多い
ようだ。そんなファッションの一つに、手染メ屋のTシャツが、お気
に入りとしてさりげなく混じっているのは至極自然な気がする。
青木さんは、今、草木染めの継続発展のために、きちんとニッチマー
ケットを作りたいと思っている。
「始めた頃は家族が食べていけるといいと思っていましたが、今は明ら
かに変わってきました。今は、『手染メ屋系』とでもいうか、自分の
分身を文化として残したい気持ちなんです」
現在の科学技術をもってすれば、どんな色でも再現することは可能。
でも、コストと手間ヒマを考えると、やはり「手染めでこそ出すべき色」
がある。
そんなクラフトワークに丁度良い規模感が、「知る人ぞ知る丁度いいジャ
ンル」すなわち、青木さんが言うところのニッチというマーケットサイズ
になる。
今は、人との差別化ではなく、自分の心地よさゆえにハンドメイドやクラ
フト系のプロダクツを求める人が増えている。手染メ屋のTシャツは、ま
さにそんな微妙なニュアンスを楽しめる人たちに、これから益々支持され
ていくような気がする。

櫨蝋(はぜろう:櫨の実が高級な和蝋燭の原料になる)の原料であるウルシ科の櫨の木の
チップを煮出して作ったスープ(染汁)。入手困難な中、福岡の業者さんから買いつけている

町家ならではの奥行きある屋根の上は柿渋染めの「干し場」。
屋根もまたアトリエの一部
- [2010/10/16 08:46]
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